無人航空機事故が発生した場合の対応はご存知ですか?

はじめに

 立入制限区域等を設定して無人航空機を飛行させていれば、あまり事故が発生することはないとは思います。しかし、もし無人航空機の不具合等で事故が発生した場合、どのように対応したらいいか、ご存知でしょうか
 事故が発生したら、飛行を中止し、負傷者の救護や危険防止措置を取る必要があるのは何となく分かると思いますが、監督官庁に事故報告が必要になるというのは、知っておりますでしょうか。

 航空法が改正されて事故時対応の罰則も規定されましたので、今回は、監督官庁への報告をメインに、少し深堀して以下の項目について解説していきます

<目次>
1.監督官庁へ報告が必要な対象事象とは?
2.「(1)事故」の具体的な報告対象は?
3.「(2)重大インシデント」の具体的な報告対象は?
4.報告の際の具体的な記載事項は?
5.報告先・報告方法は?
6.事故等で「危険防止措置」や「事故報告」しなかった場合の罰則は?
7.おわりに

1.監督官庁へ報告が必要な対象事象とは?

監督官庁へ報告が必要な対象は、大きく分けて、以下の2つに分けられます。
(1)事故
  (a)無人航空機による人の死傷又は物件の損壊
  (b)航空機との衝突又は接触
(2)重大インシデント(「事故につながる恐れがあった重大なもの」という意味)
  (a)飛行中航空機との衝突又は接触のおそれがあったと認めたとき
  (b)無人航空機による人の負傷((1)の事故によるものは除く)
  (c)無人航空機の制御が不能となった事態
  (d)無人航空機が発火した事態(飛行中に発生したものに限る)

上記事項の元となる法令は、以下の通りです。

<航空法>(事故等の場合の措置)
第132条の90 次に掲げる無人航空機に関する事故が発生した場合には、当該無人航空機を飛行させる者は、直ちに当該無人航空機の飛行を中止し、負傷者を救護することその他の危険を防止するために必要な措置を講じなければならない。
 一 無人航空機による人の死傷又は物件の損壊
 二 航空機との衝突又は接触
 三 その他国土交通省令で定める無人航空機に関する事故
2 前項各号に掲げる事故が発生した場合には、当該無人航空機を飛行させる者は、当該事故が発生した日時及び場所その他国土交通省令で定める事項を国土交通大臣に報告しなければならない。
第132条の91 無人航空機を飛行させる者は、飛行中航空機との衝突又は接触のおそれがあつたと認めたときその他前条第一項各号に掲げる事故が発生するおそれがあると認められる国土交通省令で定める事態が発生したと認めたときは、国土交通省令で定めるところにより国土交通大臣にその旨を報告しなければならない。

※筆者コメント
 「第132条の90 三 その他国土交通省令で定める無人航空機に関する事故」については、具体的に国土交通省令で定めたものは、見つかりませんでした。

<航空法施行規則>
第236条の86(無人航空機の事故が発生するおそれがあると認められる事態の報告)
 法第132条の91の国土交通省令で定める事態は、次に掲げる事態とする。
 一 無人航空機による人の負傷(法第百三十二条の九十第一項第一号に掲げる人の死傷を除く。次条第十二号において同じ。)
 二 無人航空機の制御が不能となつた事態
 三 無人航空機が発火した事態(飛行中に発生したものに限る。)

2.「(1)事故」の具体的な報告対象は?

(a)無人航空機による人の死傷又は物件の損壊

  • 「人の死傷」重傷以上のもの。
    悪天候等の外的要因によるもの(無人航空機を飛行させる者に過失がないもの)も含む。
     「人」については、第三者に限らず、操縦者及びその関係者を含む。
     なお、軽傷と判断されるようなケースは重大インシデントに該当。
  • 「物件の損壊」:第三者の所有物(人工物)を損傷させた場合の全て
    例えば、衝突による瓦のひび割れや構造物の壁を傷つけた等軽微なものを含む。

(b)航空機との衝突又は接触

  • 航空機若しくは無人航空機のいずれか又は双方の機体に衝突若しくは接触による損傷が発生したと確認できるもの
  • なお、衝突又は接触のおそれがあっただけのものは除き、これらは重大インシデントの報告の対象。

※国土交通省航空局作成の「無人航空機の事故及び重大インシデントの報告要領」より引用

3.「(2)重大インシデント」の具体的な報告対象は?

(a)飛行中航空機との衝突又は接触のおそれがあったと認めたとき

  • 無人航空機の飛行経路上及びその周辺の空域において飛行中の航空機を確認した場合で、衝突を予防するため無人航空機を地上に降下させるなどの衝突回避措置を講じたもの

(b)無人航空機による人の負傷((1)の事故によるものは除く)

  • 無人航空機により人が負傷した場合で、重傷以上を除いたもの
  • 「人」は、第三者に限らず、操縦者及びその関係者を含む
  • なお、無人航空機の飛行によらないが、飛行のための地上待機、地上移動、離着陸のための地上滑走中に発生した事案(例えば、回転中のプロペラによる負傷、飛行させようとしている無人航空機の発火による負傷等)も対象。

(c)無人航空機の制御が不能となった事態

  • 飛行中に無人航空機が機体不具合により、制御不能となった事態。
    これにより無人航空機を紛失した場合も含む
    ただし、操縦ミスに起因する操縦不能によるものは報告の対象外
  • 機体不具合の例:無人航空機と操縦装置間の通信障害(無人航空機が通信可能な範囲から逸脱したものを除く。)、想定しないバッテリー切れ、機体構造や装備品等の機能不良など。
  • 操縦ミスの例 :無人航空機が操縦装置と通信可能な範囲から逸脱したもの、バッテリー残量の確認不足によるバッテリー切れ、急旋回等の操作による失速、気象状況の確認不足により風にあおられたなど。

d)無人航空機が発火した事態(飛行中に発生したものに限る。)

  • 飛行のために無人航空機の推進装置が稼働状態にある場合において発生したもの
    これらに該当しない状態での発火(例えば、保管中の無人航空機のバッテリーの発火等)は、飛行に関連しない発火として、報告の対象外

※国土交通省航空局作成の「無人航空機の事故及び重大インシデントの報告要領」より引用

4.報告の際の具体的な記載事項は?

(1)事故の場合

  • 無人航空機を飛行させた者の氏名及び所属する会社その他の団体がある場合にあってはその名称
  • 無人航空機を飛行させた者の住所(所属する会社その他の団体がある場合にあってはその所在地。以下同じ。)
  • 無人航空機を飛行させた者の無人航空機操縦者技能証明書番号(無人航空機操縦者技能証明書の交付を受けている場合に限る。以下同じ。)
  • 事故が発生した日時及び場所
  • 許可又は承認を受けた年月日及び当該許可又は承認の番号(許可又は承認を受けている場合に限る。以下同じ。)
  • 無人航空機の登録記号(試験飛行等で登録記号を受けていない場合は当該試験飛行に係る届出番号。以下同じ。)、型式(型式認証を受けた型式の無人航空機に限る。以下同じ。)、製造者及び製造番号キ)無人航空機の機体認証書番号(機体認証を受けた無人航空機に限る。以下同じ。)
  • 無人航空機の使用者の氏名又は名称
  • 出発地及び到着予定地
  • 飛行の目的及び概要
  • 事故の概要
  • 人の死傷又は物件の損壊概要
  • 無人航空機の損壊概要(無人航空機が損壊した場合に限る。以下同じ。)
  • その他参考となる事項

(2)重大インシデントの場合

  • 無人航空機を飛行させた者の氏名及び所属する会社その他の団体がある場合にあってはその名称
  • 無人航空機を飛行させた者の住所
  • 無人航空機を飛行させた者の無人航空機操縦者技能証明書番号
  • 報告に係る事態が発生した日時及び場所
  • 許可又は承認を受けた年月日及び当該許可又は承認の番号
  • 無人航空機の登録記号、型式、製造者及び製造番号
  • 無人航空機の機体認証書番号
  • 無人航空機の使用者の氏名又は名称
  • 出発地及び到着予定地
  • 飛行の目的及び概要
  • 報告に係る事態の概要
  • 人の負傷の概要(3.(2)b)に掲げる事態の場合に限る。)
  • 無人航空機の損壊概要
  • その他参考となる事項

■報告書様式については、こちら
 記載事項の詳細解説については、下記の「報告要領」P5~8に記載されております。

※国土交通省航空局作成の「無人航空機の事故及び重大インシデントの報告要領」より引用

5.報告先・報告方法は?

<報告先>
・許可又は承認を受けた飛行:これを許可又は承認した官署(国土交通省、地方航空局)
・許可又は承認を受けていない飛行:飛行経路を管轄する官署(国土交通省、地方航空局)
 ※無人航空機による事故等の報告先一覧については、こちら

<報告方法>
・原則、報告システム(DIPS2.0[ドローン情報基盤システム2.0])を用いる。
・電話、電子メールを用いることも可。

6.事故等で「危険防止措置」や「事故報告」しなかった場合の罰則は?

<危険防止措置>
・航空法第132条の90第1項の規定の「危険防止措置」をしなかった者:2年以下の懲役又は100万円以下の罰金

<事故報告>
・航空法第132条の90第2項に当てはまる「事故」の未報告等:30万円以下の罰金
・航空法第132条の91に当てはまる「事故インシデント」の未報告等:罰則なし

上記事項の元となる法令は、以下の通りです。

航空法(無人航空機の飛行等に関する罪)
第157条の6 第132条の90第1項の規定に違反して、危険を防止するために必要な措置を講じなかつた者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
第157条の10
2 第132条の90第2項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、30万円以下の罰金に処する。

※筆者コメント:第132条の91の規定違反の罰則については、規定されておりませんでした。

7.おわりに

皆さん、いかがでしたでしょうか。
 どのような場合に事故報告が必要かどうかなどは、日頃は意識しないと思いますが、いざ発生するとバタバタしますので、是非、この機会にご認識していただけたら幸いです。 

 なお、国土交通省のHPには、上記を簡潔にまとめた「事故・重大インシデントについて」資料がありますので、これをご覧になると、さらに理解が深まると思います。


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