他人の土地上空をドローンで飛行する場合、土地所有者の許可が必要か?

はじめに

 他人の土地の上空をドローンで飛行させる場合、何となく、土地所有者の許可が必要ではないかと考えている方が多いと思いますが、実際は、どのような取り扱いとなっているのか?
 法律面を中心に解説します。

航空法では

国土交通省のHPから抜粋

航空法上、以下の①~④以外の空域であれば、基本的にドローンの飛行が可能ドローンの飛行許可等が不要となっています。
 ①空港等の周辺
 ②150m以上の上空
 ③人口集中地区の上空
 ④緊急用務空域
 ただし、ドローン飛行が可能というだけであり、土地所有者の許可が必要かどうかは、航空法上、触れてられておりません

※「飛行の方法」(人又は物件との距離が30m未満など)による飛行承認が必要なケースは、記載を省略しております。

民法では

民法では、以下のように「土地所有権の範囲」が規定されております。

<民法>
(土地所有権の範囲)
第207条 土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ

「法令の制限内」とは、例えば、建築基準法による建物の高さ制限などがあります。
この第207条の規定については、具体的に土地上空の空間の範囲を定めた省令等はなく、以下のように解釈されております。
 ※小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会(第16回)  
   別添4:無人航空機の飛行と土地所有権の関係について 令和 3 年 6 月 28 日 内閣官房小型無人機等対策推進室
  より抜粋。

【土地所有権の範囲についての基本的考え方】
民法においては、「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。」(第 207 条)と規定されているが、その所有権が及ぶ土地上の空間の範囲は、一般に、当該土地を所有する者の「利益の存する限度」とされている
このため、第三者の土地の上空において無人航空機を飛行させるに当たって、常に土地所有者の同意を得る必要がある訳ではないものと解される。
この場合の土地所有者の「利益の存する限度」の具体的範囲については、一律に設定することは困難であり、当該土地上の建築物や工作物の設置状況など具体的な使用態様に照らして、事案ごとに判断されることになる。

 したがって、他人の上空飛行について、常に土地所有者の同意(許可)を得る必要はないもの、状況に応じて同意の要否は判断されるという、何とも曖昧な解釈であるというのが現状のようです。

結局のところどうなの?

上記の官庁資料(別添4)には、以下の補足が記載されております。

2.一律の高度以下の飛行には所有者の同意が必要なのか
 土地の所有権の及ぶ土地上の空間の範囲についての基本的考え方は、上記の通りであり、当該土地の使用態様の如何にかかわらず、無人航空機が土地の上空を飛行するに当たって当該土地の所有者の同意が必要となる高度についての一律の基準は存在しない。
 なお、航空法において規定されている最低安全高度は、あくまで安全確保の観点からの規制であり、土地所有者の“利益の存する限度”の範囲を定めるものではない。

※参考1:航空法 第81条(最低安全高度)
 航空機は、離陸又は着陸を行う場合を除いて、地上又は水上の人又は物件の安全及び航空機の安全を考慮して国土交通省令で定める高度以下の高度で飛行してはならない。但し、国土交通大臣の許可を受けた場合は、この限りでない。

※参考2:航空法施行規則 第174条(最低安全高度)
 法第81条の規定による航空機の最低安全高度は、次のとおりとする。
一 有視界飛行方式により飛行する航空機にあつては、飛行中動力装置のみが停止した場合に地上又は水上の人又は物件に危険を及ぼすことなく着陸できる高度及び次の高度のうちいずれか高いもの
イ 人又は家屋の密集している地域の上空にあつては、当該航空機を中心として水平距離六百メートルの範囲内の最も高い障害物の上端から300mの高度
ロ 人又は家屋のない地域及び広い水面の上空にあつては、地上又は水上の人又は物件から150m以上の距離を保つて飛行することのできる高度
ハ イ及びロに規定する地域以外の地域の上空にあつては、地表面又は水面から150m以上の高度
二 計器飛行方式により飛行する航空機にあつては、告示で定める高度

この官庁資料(別添4)には、最後に、以下の記載もされております。

○地元の理解と協力の重要性
 無人航空機の飛行に関する法制度の面からの整理は、上記の基本的考え方及び補足事項 1~3の通りであるが、今後無人航空機が様々な用途で用いられ、その飛行エリアや頻度が増加することが予想される中、土地所有者をはじめとする地域の理解と協力を得ることは極めて重要である。
 このため、無人航空機の運航者には、適切な機体の使用、安全なルートの設定、万が一事故が発生した場合の賠償資力の確保など対策を講じた上で、地域の関係者に丁寧に説明し、理解と協力を得る取組が求められる。
 また、民間企業や自治体等が、第三者的な立場から、無人航空機の運航者と地域の間に立って、これらの取組を行うことは、一定の意義がある。

 結局は、土地上空の飛行にあたっては、「必ず土地所有者の同意を得る必要はないけども、揉めないように、土地所有者や周辺の方に事前に理解してもらうようにしておいてください。」ということですね。

余談

 あと、仮に、土地所有者から、土地上空のドローン飛行に関して損害賠償をおこされた場合ですが、数十mぐらい離れた飛行であれば、騒音もほとんどなく実害はほとんどないと考えられるので、損害賠償はなしか、極めてゼロに近くなるではないかと思っております。
 なお、ドローンによる墜落災害など、実害が発生すれば、損害賠償を要求される可能性はあります。
※あくまで私見であり、厳密な法律解釈ではないので、そういった認識でお願いします。


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